「桜田真樹の性事情」
たぶん、私の貞操観念は、はじめからトチ狂っていたんだと思う。
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私は保育園生だったころから、何となく自身の性欲が周囲の人達よりも強いことを感じていた。勿論当時は『性欲』などと言う概念などないのだから、もっと漠然と、私はきっと、ママの言う『助兵衛』なんだろうな。くらいの気持ちではあったが。思い返せば、私の性への目覚めはだいぶ早かったと思う。当時、母の実家で母や祖父母、叔父(母の弟)と暮らしていた私は、よく叔父の部屋へ忍び込み、エッチな雑誌に掲載されていた女性のヌード写真をよく眺めていた。そして、雑誌に掲載されている、女性のアップになった尻を眺めながら、『汚いケツやな、しかし』などと一人毒突いていたものだ。そりゃあ、保育園生のぷりぷりのシリケツよりかは汚かろうよ。
そんな自覚アリ助兵衛の私は自慰を覚えるのも早かった。自慰を自慰であると自覚せず、年長さんの頃からシャワーヘッドで気持ち良くなる、などしていた。しかも一丁前にオーガズムに達していたのだ。外イキが出来る保育園生。正直アダルト界においては将来有望すぎるのではないだろうか。そんな、将来有望株な私のファーストキッスは同じく年長さんの頃。当時両思いだった、たくちゃんと押し入れの中で体験した。なんとファーストキッスのくせに何度も何度もちゅっちゅちゅっちゅしていた。当時からキス好きの片鱗がフルオープンだ。思い返せば出てくる出てくる。幼少期から見え隠れする性欲モンスター要素……。末恐ろしいとはまさにこのことだと、今になって思う。
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そんな、ある意味素晴らしい可能性を秘めた幼少期を過ごした私の現在はと言うと、一歳年下の彼氏と同棲中であった。交際五年目の彼とは同棲して三年。夜の営みが廃れて二年……。元より性欲が強い私と、性欲が既に枯れ気味な彼との営みは、その気になるタイミングや頻度が完全にすれ違っていた。それに加えて、見慣れたお互いの身体に性的魅力を感じなくなりつつあった。完全に、気分は熟年夫婦である。
もちろん、営み以外に関しては順風満帆。特に問題なく毎日平和に過ごしていた。一緒に居ても何のストレスもなく、自身のありのままでいられる相手はこの人しかいない。と思うくらいには彼のことを大切に思っていた。だからこそ言えなかった。五年も一緒に居るのだ。『私、欲求不満なんだよね』なんて、言えるわけがなかった。毎日忙しく仕事をして帰ってくる彼に、朝早くに起きて仕事に行かなければならない彼に、自身の欲求不満をぶつけることなんてできなかった。
そういうわけで、私は今、猛烈に性欲を持て余していた。
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